「日本語と英語のバイリンガルはどちらの言語でも会話できる」
これは正しいと言えます。
「日本語と英語のバイリンガルは通訳もできる」
これは、正しいとは言えません。
なぜなら直訳・和訳する能力と、英文をそのまま理解する能力は
別の能力であるからです。
と述べました。では、今回はその理由について述べたいと思います。
各言語を他の言語に置き換えることなくそのまま理解できるようになれば、柔軟な脳を持つこども達は複数の言語を操ることができるようになります。しかし、和訳するためには、高度な日本語能力を必要とします。なぜなら和訳には各言語のニュアンスを理解し、意訳する能力も必要となるからです。その具体例を2つご紹介します。
日本語にあって英語にないことば、またその逆もたくさん存在します。各言語がうまれた背景や時代で概念は変わるため、別の言語に訳すことが困難なことばがうまれます。例えば日本では四季がはっきりとしているため季節に関する表現が多く、雨の降り方を表す擬音語(ぽたぽた、ざーざー、しとしと)等も多く存在しますが、英語ではその細かい表現の違いを表すことが難しいとされます。また「宜しくお願いします。」「行ってらっしゃい。」「頑張れ。」「お疲れ様。」「いただきます。」なども英語に直訳しづらいと言われます。この逆で、日本語に直訳しづらい英語表現も多くあります。
また英語には多義語が多く存在します。例えばhaveという単語は「持つ」以外にも「食べる」「飲む」「~させる」「飼う」「分かる」「消費する」など様々な日本語に置き換えられます。他にもhave toや現在完了形等にも登場します。逆に「食べる」はhaveやeat、dine等様々な表現に英訳できます。have dinner は「夕食をとる」のように夕食の時間をもつことに重きを置いている一方、eat dinnerは「夕食を食べる」のように食べる行為そのものに重きを置いています。eat、have、dineはすべて「食べる」と記憶するのではなく、各単語のニュアンスや違いを理解し、正しく使い分けられるようになることが大切です。
これらの要因から、レッスンで学んだ内容を英語のまま理解していても、ご家庭で学んだことを日本語で説明できないという現象がよく起こります。普段から直訳する習慣がついていないこども達は、レッスンで学んだ表現を和訳することが容易ではありません。中学校の授業で文法を学ぶことで直訳する習慣がついてしまう前に、英語のシャワーをめいっぱい浴び、英語を英語のまま理解し、自分で考えて発話する能力をどんどん伸ばしていきましょう。
